気がつけば、意外と何でも天ぷら。
天ぷら、バスリ倒す。
やがて17世紀に入ると、衣で揚げる天ぷらが江戸の庶民の間で大フィーバーします。当時の江戸湾は砂洲だらけで浅瀬ばかり。しかも汽水域がほとんどだったので、魚自体はいくらでもいて、網を投げれば苦もなく大量に捕れたのですが、なんせ江戸湾で捕れる「江戸前の魚」には、キス、アナゴ、カレイ、ハゼ、クルマエビなどの小魚の類しかいませんでした。なかでも、芝ではシバエビ、佃島ではシラウオ、深川ではハマグリ(カキ)がよく捕れて有名になりますが、この江戸前の小魚と天ぷらとの相性が大変良かったわけです。
当然ながら江戸では、衣付きの天ぷらが大ブレイクしたのに合わせて、もう一方の「魚の混ぜすり身揚げ天ぷら」が「薩摩揚げ」という新語で区別されるようになりました。命名し直さないとそりゃあ不便でしょうからね。

そして、鯛やブリは天ぷらにしませんから、江戸以外の土地、特に江戸に対して優越感を持っている上方などでは衣付きの「天ぷら」はバズらず、魚のすり身の揚げ物を「てんぷら」呼ぶ習慣も残ったというわけです。この流れが現在にまで繋がって呼称が混乱しているわけですが、面白いのは、薩摩では「魚の混ぜすり身揚げの天ぷら」を「薩摩揚げ」ではなく「つけ揚げ」と呼んでいるということです。
現在では、「魚の混ぜすり身揚げの天ぷら」は「揚げかまぼこ」と分類されていて、これが正式な名称となっています。ですが、私はこの言葉を誰かが使っている場面に出くわしたことがありません。聞いたことがあるのは「練り天」くらいですかね。

なぜか悪口で使われがち。
現在も、庶民に深く愛される天ぷらですが、それ故なのか、天ぷらはやたらと隠語(スラング)としても使われています。衣をつけることから、メッキ処理をテンプラと呼んでみたり、「見かけだけで中身が伴わない」という意味に転じて、未熟者や偽者を指してテンプラと呼んでみたり、ひいては、ゴルフでの打ち上げる系のミスショットをテンプラ、非正規のナンバープレートをテンプラプレート、道路のペラペラの手抜き舗装をテンプラ舗装、はんだ付けで中が空洞になった不良をテンプラ、などなど。日本人は何でもかんでもテンプラにしてしまいます。最近ではテンプレートのこともテンプラと呼び始めたそうです。

で、何が言いたいかと言うと、スラングとして使われる「天ぷら」は全て、衣がついた方の天ぷらのことを指しているということです。つまり、日本人が「てんぷら」という言葉を耳にして想像する料理には衣がついているわけです。
あらためて、「魚の混ぜすり身揚げ」を何と呼ぶべきか、日本人はいずれ大きな岐路に立たされるような気がします。いや、ないか。
大エース、じゃこ天。
さて、四国の天ぷらと言えば、愛媛の「じゃこ天」が有名です。じゃこ天は八幡浜市から宇和島、宿毛、土佐清水市にかけて、四国の西岸一帯で盛んに作られています。「じゃこ」は「雑魚」のことだと言われています。ま、「ちりめんじゃこ」が有名な土地柄ですから。ここらへんを旅行する機会があるなら、小腹が減ったらまず天ぷらをツマミましょう。その気になればじゃこ天を扱っているお店は簡単に見つかるはずです。酒の肴にもいいのですが、その地方は酒に合う料理も多いのでやたらとアルコールが捗って困ります。小腹が空いたときにスナック菓子の代わりに食べるのもよいです。

最も格の高いじゃこ天はホタルジャコのすり身を使った物と言われています。産地として最も力が入っているのは宇和島です。宇和島に数件あるかまぼこ店でホタルジャコ100%の素のじゃこ天を食べると、他では買いたくなくなるほど美味だと言われます。



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